昨年の小松左京賞落選からハヤカワJコレクションで復活のうちの一冊。デビュー作。
既に、いろんなところで語られているが、もっと語られるであろう傑作。多分、同じ来歴の円城塔『Selfe-Reference ENGINE』より語られるであろうと思う。それは読めば語りたい、語り易いという危うさも持っている。いい事か悪いことかはわからないが。
著者、伊藤計劃はこれがデビュー作であるがネットではかなり有名な人物で、サイバーパンクとMGSと映画の人。私もこの人の映画評は大変興味深くずっと読んでました。善き評論家が善き実作者になれるわけではないが、やはり完成度は高い。と、いうより態度が誠実なのである。9.11以後のアメリカの対テロ戦を描くSF軍事スリラーの外見を装い、世界の在り様と個人、罪とそれに対する罰もしくは赦しを希求する物語を徹底した思索を繰り返し物語られていく。その過程も行く末も容赦ない。その分逃げていないのだ。著者のブログから伺いしれる情報から類推するのは甚だ失礼かもしれないが、彼の人生観からくるのか、なんともナイーヴでありながらシリアスな切実さが滲む。主人公もマッチョな人物ではなくアメリカ情報軍の暗殺部隊の大尉でありながら映画マニアの文学青年なのだ。彼のモラトリアムの先にたどり着いた結末が、また痛々しい。セカイ系と親和性の高い、その方面だけで読んでしまう人も多いと思うが、決してそうではないのだ。
物語の結末や軍事的、もしくは社会情勢等のシミュレーションの細部を指摘したり批判するのはたやすいが、あまり意味はないのはこの作品とちゃんと向き合えば一目瞭然なのとクリティカルヒットは日記で報告があるでしょう。その他はエピローグ冒頭の「これが、ぼくの物語だ。語り終えたあと、ぼくはそう言ったように思う。」が全てなんじゃないでしょうか。
とにかく必読。
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